世の中のOpenFlowコントローラの動向から透けて見えるもの?(Nicira Networks編)

エンジニア、みんな大好きな、PublickeyにOpenFlow界の注目かつ謎の企業Nicira Networksのインタビュー記事が出たことを記念して!?OpenFlow界の動向など書いてみる。

インタビュー:ネットワーク仮想化で注目される米ベンチャーNicira Networksが実現しようとしていること - Publickey

今回、Publickeyにインタビュー記事が出たNicira Networks。言わずとしれた、OpenFlowの申し子というべき企業。Nick McKeown研究室出身のMartin CasadoをCTOに据え、一番有名と思われるOpenFlowコントローラであるNOXを開発してきた企業だ。

私が見るに、OpenFlow界というか、ネットワーク仮想化の業界においてトップランナーだと思われるのだが、いかんせんPublickeyの記事にもあるようにステルスモードなので、外からは全く何をしているのかよく分からない。一方で、NTTと共同で遠隔ライブマイグレーション実験などを行ったり、東京エレクトロン日本での販売代理店契約を結んだりしている。

アメリカでどの位商品を販売しているのかという情報がうかがい知れないのだが、日本で販売活動をしているというのが、意外というか、日本を市場として重視していそうな気配である。

その、Niciraの商品はNicira Network Virtualization Platformというらしいのだが、これまた製品として販売しているわりには正体が分からない。

NOXの開発がGitのログを見る限りここ最近(2011年3月くらいから)全く活発ではない、また、CTOのMartin Casadoを含めたNiciraの面々が著者のOnix: A Distributed Control Platform for Large-scale Production Networksを2010年のOSDIに発表していることを考えると、上記のNicira Network Virtualization PlatformはNOXをベースではなく、Onixベースの商品と考えられる。

Onixは、マルチコントローラに対応したOpenFlowコントローラの実装である。OpenFlowのコンセプトで重要なのは、Logically centralizedなネットワーク制御だと私は思っているので、そのコンセプトを具現化した現時点で明らかになっている唯一の実装といって良い。論文の詳細はそのうちブログで紹介したいと思うが、Onixの核をなす思想は、ネットワークの状態というのはグラフ構造で表現できるというものだ。論文の中では、NIB (Network Information Base)と読んでいる。スイッチ間のトポロジだけでなく、スイッチとポートの関係などネットワーク全体の情報は、ノードとエッジ、それらに付けられた属性からなるグラフ構造そのものだというのが彼らの主張である。また、アプリケーションによって求められる一貫性のレベルやレスポンスが異なるので、Onixでは、SQLが使えるトランザクションをサポートしたデータベースと、DynamoライクなKey-Value Storeを用意しているということだ。

Niciraの求人を見ると、Senior Software Engineer - Distributed Systems, Apache Zookeeper, Cassandraとか出ているのを見るとやっぱりOnixベースの商品を開発しているんだという考えをサポートするものだ。余談ではあるが、ちょっと前には、Suppor Engineer - Tokyoなるポジションも出ていた(もう無くなっている)

Niciraは、Open vSwitchには、OpenFlowプロトコルにNXMというNiciraのベンダー拡張機能を実装しており、そのメッセージはOpenFlow標準のメッセージより遙かに大量にあったり、OpenStackにも相当コミットしていると聞く。CTOのMartin Casadoは自身のブログでSoftware Defined NetworkのコントローラのAPIの標準化には否定的な考えをしてしているが、これは、自社の製品への自信から来るものなのかもしれない(もちろん、自社へのメリットを得るためのポジショントークの面もあると思う)

LinkedInに登録されている従業員数だけでも70人なので、従業員100人規模くらいであろう。来年2月には、ステルスモードから脱却するということで、それは怖くもあり楽しみでもある。